「複数社に頼んだほうが早く売れる」は本当か。
こんにちは、才光不動産です。
「いくつかの不動産会社に頼んだほうが、競争になって早く売れますよね?」。これも非常によく聞く言葉です。競争原理が働いて、各社が一生懸命動いてくれる——。論理としては筋が通っているように聞こえます。でも不動産の世界では、この論理が逆方向に働くことがほとんどです。
今日は「一般媒介と専任媒介の違い」を軸に、この勘違いをほぐしていきます。
今日の勘違い:複数の業者に依頼する一般媒介にすれば、競争が生まれて早く・高く売れる。
現実:複数社に依頼された物件は、どの業者も本気を出しにくい構造になっています。「誰も本気を出さない物件」が生まれるのが一般媒介の現実です。
業者の立場から考えると見えてくること
不動産業者が売却活動に使うリソースは有限です。広告費、人員、時間。これらをどの物件に投入するかは、ビジネス判断です。複数社に依頼された物件を担当する業者の立場で考えてみてください。どれだけ広告費をかけて買主を見つけても、他社が先に売ってしまえばその費用はゼロになります。成約できなければ手数料は一円も入りません。
この構造の中で業者が合理的な判断をするとすれば「確実に手数料が入る物件に注力する」ことです。つまり専任媒介や専属専任媒介で依頼されている物件のほうが、広告費をかける動機が強くなります。一般媒介の物件は「もし成約できたらラッキー」という扱いになりやすいのが現実です。

一般媒介が持つもうひとつの問題
一般媒介には、もうひとつ見落とされがちな問題があります。それは「レインズへの登録義務がない」という点です。専任媒介は7日以内のレインズ登録が義務付けられていますが、一般媒介にはその義務がありません。
レインズとは、全国の不動産業者が物件情報を共有するシステムです。ここに登録されることで、全国の業者が買主に紹介できるようになります。一般媒介で複数社に依頼した場合、各社がレインズへの登録を急がないため、情報が市場に広がりにくくなります。「複数社に頼んだほうが広まる」どころか、逆に情報の流通が滞ることがあるのです。
専任媒介が売主に有利な構造的理由
専任媒介は1社だけに依頼する契約です。「1社に絞ることで選択肢が狭まる」という印象を持つ方もいますが、実際は逆です。1社に絞ることで、その業者は「この物件は必ず自分が売る」という確信のもとで動けます。広告費を惜しまず、レインズにも即日登録し、他社への情報提供も積極的に行う動機が生まれます。
また専任媒介には2週間に1回以上の活動報告義務があります。売主は売却活動の進捗を定期的に確認でき、問題があれば早期に対応できます。一般媒介では報告義務がないため、各社が何をしているのかが見えにくくなります。

一般媒介が有効なケースも存在する
すべての状況で専任媒介が最善というわけではありません。一般媒介が有効なのは、売主が複数の業者を自ら管理できる状況にある場合や、急いで売る必要がなく選択肢を広く持ちたい場合などです。また知名度の高い人気エリアの物件で、需要が明らかに高い場合は競争原理が働くこともあります。
ただし多くの一般的な住宅地の物件では、専任媒介のほうが結果として早く・良い条件で売れることが多いというのが現場の実感です。「競争させる」という発想より「一社に本気になってもらう」という発想のほうが、売主にとっての実利が大きいことがほとんどです。
競争させることより、信頼できる一社に本気になってもらうことのほうが、売却結果に直結します。複数社に頼む前に、まず「この業者は信頼できるか」を見極めることに時間を使ってください。
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