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人と家の物語

空き家は誰かの「続き」

日曜日の「人と家の物語」#05

空き家は誰かの「続き」を待っている

こんにちは、才光不動産です。

空き家という言葉には、どこか寂しさが漂います。社会問題として語られることが多く、数字や対策の話になりがちです。全国に何百万戸あるとか、固定資産税の優遇がなくなるとか、行政が解体費を補助するとか。そういう話はすべて正確で重要ですが、私はこの仕事を通じて、空き家のひとつひとつに「物語の途中」という感覚を持つようになりました。数字で語られる前に、そこには人がいたのです。

札幌市内のある住宅地で、長く放置された一軒の家を査定する機会がありました。雑草が伸び、雨戸が閉まったままで、外から見る限りは「終わった家」に見えました。近隣の方から「早く何とかしてほしい」という声が出ているとも聞いていました。確かに外観だけ見れば、そう思われても仕方がない状態でした。

ところが中に入ると、話は違いました。玄関に古い傘立てがありました。傘が一本、まだ差してありました。台所の壁には手書きのメモが画鋲で留まっていました。「牛乳、パン、卵」と書かれていました。誰かの、ある朝の続きがそこにあったのです。

放置されているのではなく「止まっている」のだと思う

空き家が生まれる理由はさまざまです。相続の問題、遠方への転居、施設への入居、そして死別。どれも「誰かがそこを離れざるを得なかった」理由です。好き好んで家を空けた人はほとんどいません。計画的に空き家にした人もほとんどいない。何かの事情で「続き」が書けなくなって、家だけがそのままになってしまった。そういうことです。

だから私は空き家を「放置された家」とは思いません。「止まっている家」だと思っています。止まっているだけで、動き出す可能性はある。誰かが鍵を開けて、また息を吹き込めば、その家はまた「続き」を始めることができます。あの傘立ての傘も、台所のメモも、止まったままの時間の一部です。終わったのではなく止まっているのだということを、あの家は静かに教えてくれました。

 

空き家を前にしたとき、私が考えること

査定をする立場として、私が見るのは土地の形状や接道状況や近隣の成約事例です。それは仕事として当然のことです。でも同時に「なぜこの家が止まったのか」という問いが頭の片隅に生まれます。家族の事情なのか。遠方の相続人が動けないのか。思い入れが強すぎて手放せないのか。その理由によって、この家の「次」のあり方が変わってくるからです。

空き家のオーナーが抱えている事情は複雑です。単純に「早く売ってください」と言える状況ではないことも多い。兄弟で揉めていることもあります。亡き親の家を売ることへの罪悪感があることもあります。遠方にいて現状が把握できていないこともあります。不動産の問題である以前に、人間関係の問題であることがほとんどです。

「続き」を引き受ける人たちのこと

あの家はのちに、若い夫婦が購入しました。大規模なリフォームをするわけではなく、使えるものはそのまま使い、少しずつ自分たちの家にしていくと言っていました。「前の人が大切にしていたことが伝わってくる」と言った言葉が、私には印象的でした。

前の住人が誰だったか、どんな暮らしをしていたかは知らない。でも家の中に残された痕跡から、その人の丁寧さのようなものが伝わってきたというのです。傘立てのこと、台所のメモのことは話しませんでした。でも彼らは何かを感じ取っていた。家とは不思議なものだと思います。言葉を持たないのに、確かに何かを語りかけてくる。住んだ人の気配が、壁や床や窓の向こうに染みついている。

その夫婦が引越しを終えた後、一度だけ連絡がありました。「庭の木に花が咲きました」という短いメッセージでした。写真が一枚添付されていました。小さな白い花が、手入れされていない枝の先に咲いていました。誰かが植えた木が、誰かの手でまた水をもらっている。止まっていた時間が、また動き始めた瞬間だと思いました。

空き家問題を「人の問題」として考えること

空き家問題は確かに深刻です。でも私はその問題を、数字や政策だけで語りたくありません。一軒一軒に止まったままの物語がある。その物語の続きを書く人を見つけることが、私たちの仕事の本質のひとつだと思っています。空き家を抱えているオーナーの方には、ぜひ一度話を聞かせてほしいと思っています。売る売らない以前に、その家をどうしたいかという話から始めることが、たいていの場合、一番の近道です。

あの台所の壁の「牛乳、パン、卵」というメモは今どうなったのか。あの家を訪ねた若い夫婦が、どんな朝を迎えているのか。それを知ることはできません。でも庭の白い花の写真が、私の中ではひとつの答えになっています。止まっていた時間が再び動き出す。その瞬間に関われることが、この仕事の醍醐味だと思っています。

家は止まっても、物語は終わりません。続きを書く人が現れるまで、家はただ静かに待っています。空き家とはそういうものだと、私は思うようになりました。庭の木に白い花が咲いたという知らせが届くたびに、この仕事を選んでよかったと思います。

毎日更新しています。

本日は以上です。

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