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人と家の物語

ある女性とお母さんの家の話

日曜日の「人と家の物語」

親の家を片付けるということ。

こんにちは、才光不動産です。

今日は少し重たい話をします。親が亡くなった後に残された家を片付ける、という経験についてです。この仕事をしていると、そういう局面に立ち会う機会が少なくありません。売却の相談に来られる方の多くが、相続や実家の処分を抱えた方です。その方たちとの会話の中で、家の片付けという作業がいかに単純ではないかを、何度も感じてきました。

家を片付けるとは、物を捨てることではありません。その人が生きてきた時間を、どう扱うかという問いに向き合うことです。

「物を捨てるのに罪悪感があって、なかなか進まないんです」。この言葉を、私は何十回と聞いてきました。その罪悪感は正当なものだと思っています。それは親への愛情が、物という形を通じて表れているからです。

ある女性と、お母さんの家の話

50代の女性が、亡くなったお母さんの家の売却相談に来られました。お母さんは80代でひとり暮らしをされており、昨年亡くなられたとのことでした。女性は遠方に住んでいて、毎月通いながら少しずつ片付けているのだけれど、なかなか終わらないとおっしゃっていました。

「物が多くて」と言いながら、でも声のトーンはどこか申し訳なさそうでした。物が多いことを責めているのではなく、それを捨てることへの葛藤が、言葉の奥に見えました。「お母さんはどんな方だったんですか」と聞くと、少し間があってから「几帳面な人でした。何でも取っておく人で」と笑いながら言いました。その笑い方の中に、お母さんへの愛情と、今自分がやっていることへの複雑な感情が混ざっていました。

捨てられないものの正体

親の家を片付けていると、何でもないものが手を止めさせます。引き出しの奥から出てきた古い写真。読み古した文庫本。使い込まれた台所道具。これらを捨てることが「その人を消すこと」に感じられてしまう。だから手が止まる。

その感覚は間違っていないと私は思います。物には記憶が宿っています。それを粗末に扱うことへの抵抗感は、人として自然な感情です。ただ同時に、片付けが進まない限り家の処分も進まず、固定資産税と維持費が毎年かかり続けるという現実もあります。感情と現実のはざまで、遺族の方は揺れ続けます。

「捨てる」ではなく「手渡す」という発想

その女性との話の中で、私がお伝えしたことがあります。「捨てる」という言葉を「手渡す」に変えてみることです。まだ使えるものは必要としている人のもとに渡す。思い出の品は写真に撮って残す。どうしても手放せないものはいくつか手元に置く。すべてを捨てる必要はないし、捨てることが片付けの唯一の方法でもありません。

その女性はしばらく考えてから「そういう考え方もあるんですね」と言いました。何かが少し軽くなったような顔でした。片付けの方法を変えたわけではありませんが、向き合い方が変わると、同じ作業でも体への負担が違います。

家が空になる日

数ヶ月後、その女性から「ようやく片付きました」と連絡がありました。声のトーンは穏やかでした。「思ったより時間がかかったけれど、ちゃんと向き合えた気がします」と言いました。片付けが終わったことへの安堵と、もう戻れない場所についての寂しさが混ざっているような声でした。

家が空になるということは、その人がそこにいた時間が完結するということです。完結することは終わりではなく、次の誰かの時間が始まることでもあります。その女性のお母さんが長年暮らしたあの家は、のちに別の家族の手に渡りました。家の記憶が次の人の記憶に重なっていく。それがこの仕事の中で私が繰り返し目にする、静かな引き継ぎの形です。

親の家を片付けることは、その人の人生と向き合うことです。時間がかかっても、急ぐ必要はありません。ただ現実とも向き合いながら、自分のペースで進めてください。その先には必ず、次の誰かのための「続き」があります。

毎日更新しています。

本日は以上です。

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