「住まいの解剖図鑑」を読んで
物件の見方が変わった話。
こんにちは、才光不動産です。
今日紹介するのは「住まいの解剖図鑑」(増田奏著・エクスナレッジ)です。建築家である著者が「心地よい家とは何か」をイラストと文章で丁寧に解説した本で、建築の専門書でありながら一般の方にも読みやすいロングセラーです。
読む前は「建築士向けの本かな」と思っていました。読み始めて数ページで、この本は「家を選ぶすべての人」に向けて書かれていると気づきました。なぜあの部屋は落ち着くのか。なぜあの間取りは住みにくいのか。その答えが、具体的な言葉とイラストで示されています。

この本が伝える核心:心地よい家には「理由」があります。感覚的に「なんとなく落ち着く」と感じる空間には、必ず設計上の根拠が存在します。その根拠を知ることで、家選びの精度が格段に上がります。
「なぜあの部屋は落ち着くのか」への答え
本書で最初に刺さったのは「天井高と落ち着き感」の関係についての解説です。天井が高いほど開放的で良いと思いがちですが、著者はそれが必ずしも「心地よさ」にはつながらないと言います。人が最も落ち着くのは、自分の体のスケールに近い空間です。高すぎる天井は解放感と同時に「宙ぶらりんな感覚」を生みます。天井高2.4〜2.5mという一般的な住宅の天井が、実はよく考えられた数字だということが、この章を読むとわかります。
内見のとき「この部屋、なんか落ち着くな」と感じたことのある方は多いと思います。その感覚の正体が、この本には丁寧に解説されています。天井の高さだけでなく、壁の色・素材の質感・窓の位置と光の入り方・隣室との関係——。これらがすべて「落ち着き感」に影響しています。
「窓の位置ひとつで生活が変わる」という真実
本書の中で特に実用的だと感じたのが「窓」についての章です。窓は光を取り込むための開口部だと思っていましたが、著者はそれだけではないと言います。窓の位置によって、部屋の使い方・家具の配置・プライバシーの確保・風の通り方がすべて変わります。
内見の際に窓の位置を確認する方は多いと思いますが「南向きかどうか」だけで判断していないでしょうか。この本を読んでから私は、窓の「位置と高さと大きさ」を意識的に見るようになりました。同じ南向きでも、腰高窓と床から天井近くまでの縦長窓では、部屋の印象と使い方がまったく違います。
「玄関の幅」が家全体の印象を決める
本書で特に「なるほど」と思ったのが玄関についての記述です。玄関の幅と奥行きは、家全体の第一印象を決めます。狭い玄関は「この家は小さい」という印象を最初に与えてしまう。逆に適切な広さと奥行きのある玄関は、それ以降の部屋の広さを「大きく」感じさせる効果があります。
不動産の内見でも同じことが起きています。玄関が暗く狭い物件は、それ以降どんなに広いリビングがあっても「なんとなく狭い家」という印象が残りがちです。買主が物件に感じる印象は、最初の5秒で決まると言われますが、その5秒が玄関で決まることが多い。この本を読んでから、私は売却物件の玄関の印象改善を売主の方にお勧めするようになりました。

物件を選ぶ目が変わる一冊
この本の最大の価値は「感覚を言語化してくれること」です。「なんとなく好き」「なんとなく落ち着く」という感覚を、「なぜそう感じるのか」という言葉に変えてくれます。言語化された感覚は、次の物件選びのときに使える基準になります。
「天井が低めでも落ち着く感じが好き」「窓は大きいより高い位置にあるほうが好き」「玄関に土間があると気持ちが落ち着く」——。こうした自分の好みの根拠を持っていると、内見のときに「なんとなく」ではなく「ここが自分に合っている・合っていない」と判断できるようになります。その精度の違いが、長く住み続けられる家を選ぶための差になります。
「住まいの解剖図鑑」
著:増田 奏 エクスナレッジ
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