こんにちは、才光不動産です。
玄関の扉を開けた瞬間、その方は一歩中に入ったまま、しばらく動きませんでした。
「……思っていたより、静かですね」
小さくそう言って、廊下の奥、リビングの方向へと視線を送っていました。
この物件は、条件だけを見れば特別目立つものではありません。
駅からも少し歩きますし、築年数も新しいとは言えない。
それでも、その方の表情には、
「数字では測れない何か」
を感じ取っている様子がありました。
条件が揃っても、決めきれない理由

これまでにも、いくつか物件を見てきたと聞いていました。
どれも条件は悪くない。
むしろ、今回よりスペックが高いものもありました。
それでも決断に至らなかった理由を尋ねると、
その方は少し考えてから、こう言いました。
「悪くはないんですけど……暮らしてる自分が、あんまり想像できなくて」
家探しではよくある言葉です。
しかしこの一言には、
条件比較では埋まらない違和感
が含まれています。
人は家を見ているようで、未来を見ている
リビングに入ると、南側の窓からやわらかな光が差し込んでいました。
冬でも日中は暖かくなりそうな印象です。
しばらく窓の外を眺めたあと、その方はふと笑って言いました。
「朝、ここでコーヒー飲んだら、ちょっと気持ち切り替えられそうですね」
その瞬間、見ている対象が
「家」から「これからの生活」
に変わったのが分かりました。
人は家そのものを選んでいるようで、
実際にはそこで過ごす時間や、
日常のリズムを選んでいます。
迷いが消えるのは、感情が動いたとき

条件表を見返すと、完璧とは言えない点はいくつもあります。
それでも、その方の口からは、もう「迷い」の言葉は出てきませんでした。
「全部が理想じゃなくても、
ここならちゃんと暮らせそうな気がします」
その言葉を聞いたとき、
この家はすでに“候補”ではなくなっていた
のだと思います。
家は、人の人生の背景になる
引き渡しの日、鍵をお渡ししたあと、
その方は少し照れたように笑っていました。
「最初は不安もありましたけど、今は楽しみの方が大きいです」
家は、住んだ瞬間に完成するものではありません。
暮らしが積み重なって、
少しずつその人の居場所
になっていきます。
私たちは、その始まりの場面に立ち会っているだけなのだと、
改めて感じた一日でした。












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