もう一度だけ振り返った理由
こんにちは、才光不動産です。
玄関の前で、その方は少しだけ立ち止まりました。
靴を履いたまま、ドアノブに手をかけた状態で、
なぜか一度だけ室内を振り返ったのです。
「……なんか、落ち着きますね」
そう言って、小さく息を吐きました。
その仕草を見て、この家はもう
“見学中の物件”ではない
と感じました。
この家は、条件だけを並べると決して目立つ存在ではありません。
駅からは少し距離がありますし、築年数も新しいとは言えない。
それでも、その方の視線は不思議と何度も室内に戻ってきました。
壁の色、床の感触、窓から入る光の角度。
どれも派手ではありませんが、
日常を想像するには十分な材料でした。
条件が揃っても、決めきれなかった理由
これまでにも、その方はいくつかの物件を見てきました。
間取りが広い家、築浅の家、駅に近い家。
条件表だけを見れば、今回より魅力的に見えるものもありました。
それでも決断には至らなかった理由を尋ねると、
少し考え込んでから、こんな言葉が返ってきました。
「悪くはないんですけど……
帰ってきた自分の姿が、あんまり想像できなくて」
家探しでは、よく耳にする言葉です。
しかしこの一言には、
条件比較では説明できない違和感
が含まれています。
人は家を選んでいるようで、
実際にはその家に帰ってくる自分、
そしてそこで過ごす時間を選んでいます。
冬の話になると、空気が変わりました

話題が冬の暮らしに移ったとき、
その方の視線は自然と床や窓に向かいました。
「朝、ここ寒くないですか?」
「雪の日って、この動線どうなります?」
どれも、派手な設備の話ではありません。
毎日を積み重ねる中で感じる、
小さな負担や不安についての質問でした。
「冬がしんどいと、家に帰るのが億劫になるんですよね」
その言葉を聞いたとき、
この家が選ばれつつある理由が、はっきりと見えました。
安心が先に立つと、迷いは静かになります
最後にリビングで立ち止まり、
しばらく何も話さない時間が流れました。
外はまだ明るく、窓からの光が床に伸びています。
「ここなら、冬も含めてちゃんと暮らせそうですね」
その一言で、迷いは終わりました。
価格でも、立地でもなく、
“安心が先に立った家”だったのです。
家は、住む人の時間を受け止めます

引き渡しの日、鍵をお渡しすると、
その方は少し照れたように笑いました。
「派手じゃないですけど、
ここなら長くいられそうな気がします」
家は、住んだ瞬間に完成するものではありません。
これから積み重なる毎日が、
少しずつその家を
“その人の居場所”
にしていきます。
才光不動産では、条件だけでなく、
その方の時間が無理なく流れるかどうかも大切にしています。
家は、人生の背景になる場所だからです。














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